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第3話 ふたりの過去

--芹加side--


すこし前に翔くんから届いたメールにはこう書かれていた。


From:鈴木翔
To:海部芹加
Sub:無題
「体験入部期間中の1年は17時までしか見学できないけど、
おれはたぶん部活が終わる18時まで練習する。
スポーツ推薦で入った人たちは初日から部活が終わる時間まで練習参加するって聞いたし。
(女(じょ)バスは20時までやるんだってね!ヤバ!)
おれは推薦で入ったわけじゃないけど、もう陸部入るって決めてるから18時までやる。
芹加ちゃんは先帰っててもいいよ~。
あ、もし残るんならそのときは連絡ちょうだいね!」


現在の時刻は17時30分。もうあとすこしで翔くんが言っていた時間になる。
特に見たい部活もなかったので、図書室で本を読んで時間をつぶした後、
わたしは陸上部が練習しているグラウンドをぼうっと眺めていた。


「あ、ねえねえ、あなたもしかして1年生かな?」

声のする方へ顔を向ける。

「はあ、そうです」

髪はショートに切りそろえ、小柄な体型が小動物を思わせる。
しかし、先輩らしき人に声をかけられる覚えはないので、少しいぶかしい。

「突然話しかけてごめんね、さっきからグラウンドの方見てるから、もしかしてなにか興味ある部活でもあるのかなって。中学は部活やってた?」

「ええと、バレー部と音楽部を兼部してました。でも高校では入るつもりはなくて。今は友達が長距離の体験してて、終わるの待ってるんです」

「そうなんだ~。あれ?でも長距離はうちの高校男子しかないんだけどな。あ、」

と言って、その人はわざといたずらっぽく内緒話のトーンで言う。
「もしかして、彼氏?」

まるで古傷がうずくかのように、胸がチクりと痛む。
こういう反応はもう慣れっこだ。

「いえ、ほんとにただの友達で。ちいさいときから一緒だったってだけです」

「そっか。仲いいんだねえ。あ、そうだ、まだ名前言ってなかったね、わたしは3年生の南地(みなみじ)あかるって言うんだ。周りからはミナミって呼ばれてる、よろしくね、ええっと…ー」

「わたしは海部(かいふ)です」

「じゃあ、海部ちゃん!特にどこの部活に入るって決めてないんならーーー」


南先輩はわたしの耳元に口を近づけ、あることを告げる。
ふうむ。

「そうですね、どうしましょう…」

「もちろん今決めなくてもいいよ!体験入部期間がおわるまで検討してくれていいから!」

「はあ、じゃあ考えてみます」

少々苦笑いになってしまうが、南先輩は特に気にした様子もない。
小柄な割に押しの強い先輩の勢いに断り切れず、なんとなく返事をしてしまった。

sage
 
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